『為に生きる』

第二十一話 古美術商との別れと「生涯現役」

古美術商との別れと「生涯現役」

 

私は2017年代表取締役を務めていた株式会社 古美術八光堂を株式会社SOU(現在のバリュエンスホールディングス株式会社)に譲渡し、会長職も含め、全ての役職から退くこととなります。

同時に株式会社SAKIMOTOを新規に設立し、代表取締役に就任したのです。

私は古美術商が天職と考え、生涯現役を貫く思いで事業に専念してきました。

しかし事業拡大に伴い、取引の大小にかかわらず、若い営業スタッフだけに任せることは無く、実績を積ませ勉強のためにも出来る限り同行して、商談が成立するまでの経緯を、身をもって感じてもらうことに務めたのです。

その為、毎日が非常に忙しく大変な時期が有ったりして、その時は東京の東銀座に住まいを構え、月のうち半分は東京を中心に仕事に専念できたのでした。

 

おかげで出張鑑定は大阪と東京を拠点にして、南は長崎から北は札幌青森まで日本全国を愛車ハイエースに乗って出かけ、仕事の楽しさを充分に堪能させて頂いたのでした。

特に2010年くらいから2017年の最終年までは古美術の面白さにどっぷりと浸かり、楽しくて充実した日々が送れたのでした。

 

 

当時世間ではテレビで「なんでも鑑定団」が大変な人気で、私自身もテレビ局の依頼で時々テレビ出演をしたのも楽しみの一つでした。

その間、大阪本店以外に5店舗、東京、博多、名古屋、京都、広島、と出店を果たし事業の拡大を図ります。

人材は各支店ともに、ほとんどが現地で採用のスタッフで、人材の育成が急務となるのです。そこで私は従来から在籍していた営業スタッフを厳しく育てることにします。営業職のみならず、若手社員や新入社員の育成を委ねるためです。

現在は少し反省しているのですが、八光堂の代表者当時の私は、期待をしている人材には特に厳しい指導をしたかもしれません。お陰でその人たちに私の印象を尋ねると、一同に「怖い人」と言われているようです。

しかし、当時私が厳しく育てた人たちは、現在、企業の中枢となる営業部長や管理責任者などになり、新規入社してくる各部署の人材や営業マンの指導にあたる事になり、私の叱咤激励には本当に感謝していると言ってくれています。

 

お陰で私は心置きなく株式会社 古美術八光堂と古美術の世界から引退を決めたのです。

嬉しいことに、バリュエンスホールディングス株式会社は、株式会社 古美術八光堂を買収後、積極経営を続け、全国に合計10店舗を展開しているのです。