『為に生きる』

第二十話「事業への挑戦」

事業への挑戦

 

1998年、高校を卒業した長男、次男が次々に私の事業に参加、私のもとに来てくれるのです。

充実した楽しい日々を送っていた時期に、ガンバ大阪を退団した三男晋輔が同じく参加、成人した三人の息子達それぞれが本当に頼もしく見え、至福の時期がやってきたのでした。

やがて私は、還暦を迎えることとなり、私の喜びも頂点に達していたのですが。

何しろ三人の息子は揃って高卒で大学を卒業せずに、私の事業に参加してきたのです。

息子たちは、それなりにしっかりしていたのですが、親としての不安は世間に出ての一般社会常識や、日本経済の仕組み、「商売とは」「銀行とは」など、しっかりと把握できていないのでは無いかとの思いで、営業でトップの優秀な銀行マンをお招きして、息子達と妻、私も含め5人を前にして白版を背にして、講習をして頂いたのです。

また、商売、事業はこうあるべきだ等、実戦のについては、時折、私が世間話と共に、話聞かせる事もあったのです。

 

すると、しばらくして、私のもとに息子たち三人が揃って話があるとやってきたのです。

聞けば三人がそれぞれ独立心と事業意欲がありそれぞれの思いにチャレンジしたいということでした。

 

 

 

その時はすでに、2004年に創業していた株式会社MKSコーポレーションの社長、専務、常務として3人は職務についていたのです。株式会社MKSコーポレーションは、マンションやテナントビル等の不動産も所有し、「焼きたてチーズタルト専門店PABLO(パブロ)」、金プラ、ブランド品の買取の店「なんぼや」がスタートしたばかりで、営業を開始していたのでした。

 

当時息子たちはまだ20歳代で、30歳前の若さで事業に挑戦ということに多少の不安は有りましたが、3人それぞれの、熱意に溢れた思いを理解して、喜んで同意したのです。

そして、3人は時間をかけて話し合い、株式会社MKSコーポレーションの事業を三つに公平に分割することにし、それぞれの道を歩むことを決めたのでした。

 

その後、長男将光は、一世を風靡し誰もが知っている「焼きたてチーズタルト専門店PABLO(パブロ)」や、現在飛躍的な展開をしている食パン「嵜本」を運営している「株式会社ドロキア・オラシイタ」の代表取締役を務め、現在活躍中です。

 

次男晃次は、マラソンランナー向けのサプリメント「アミノサウルス」で人気急上昇の「SAURUS JAPAN株式会社」と、マンションを数棟所有する不動産業の「株式会社MEGA VISION」の代表取締役を務めています。

 

三男晋輔は「なんぼや」を運営する「バリュエンスホールディングス株式会社(旧株式会社SOU)」の代表取締役として、驚異的な売り上げを計上、事業拡大を図りマザーズに上場を果たしているのです。

 

振り返ってみると、私はその折、息子達3人のそれぞれの事業に対し、口出しは一切せず資金もほとんど出さず、本人の努力に委ねたのでした。私が嬉しく感じるのは、個々が事業意欲に燃え、それぞれの思いにチャレンジすることが出来る「土壌」がごく自然に出来上がっていたことなのです。

 

現在、3人の息子たちは、それぞれの企業のトップとして戦い挑戦を続けているのですが、それこそが私の誇りであり、この上ない喜びでもあるのです。2020年から1年以上続くコロナ惨禍による困難な状況にあっても、日々努力を重ね、事業に挑戦し続ける3人の息子たちの姿には敬意を表するとともに、生涯現役を続ける私自身の身近な良きライバルとして、目を細めながら見続けているのです。