第十五話「感謝」
感謝
古美術品の売買をする「八光堂」とリサイクルショップ「物流センター関西」で楽しく仕事を続けている時に、突然信用金庫の支店長がお見えになります。
「小さなマンションを1棟買わないか?」
1階で店舗も出来るというお話を頂き「古美術八光堂」の移転も視野に入れ、喜んで購入を決めたのです。
築20年以上経っているて物件で諸問題が有り、正式な移転登記には契約してから1年かかりましたが、おかげで、私は小さいけれど4階建てで、2階から4階は賃貸マンションが6室ある自社ビルとなった1階で「古美術八光堂」を営業することとなります。
嬉しいことに、このビル購入が次へと進む第一歩となる事に、その時は気付いていなかったのです。
当時、その地区は土地区画整理事業の真っ只中で、事業関係者が毎日行き来されて、店舗前の道路も工事中で大変な状況だったのです。
その上、近くの公園やガード下にはホームレスの人たちが沢山居られ、事業の進行が懸念されたのです、しかし、道路計画などを関係者にお聞きすると素晴らしい事業で、見違えるような地域に生まれ変わるのではと期待が出来たのです。
嬉しいお話なので、事業関係者や工事関係の方々、ご近所の方や関わり合いのある人たちには、感謝の気持ちを忘れず、毎日楽しく見守っていたのです。その後、植樹された中央分離帯のある素晴らしい道路になり、その地域全体が大きく生まれ変わったのでした。
「パークス通り」と名付けられたその道を隔てて私の店「古美術八光堂」の正面に造成中の空き地が有り、毎日眺めていて、この土地が買えればとの、思いが募ってきたのでした。
私は事業関係者、工事関係者、だれかれ構わずに声を掛け、売るときは、処分される計画があれば声を掛けてください、「欲しいのです、売ってください」と言って回ったのでした。失礼なことを言う人と思われていたのでしょう。まったく相手にされず、売却の予定は一切無いとのことだったのです。